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南部鉄器はIHで使えるの?購入時に注意すべきポイントを解説

「南部鉄器はIHで使えますか?」「IHなので南部鉄瓶は購入できません」このようなお問い合わせやご意見を多くいただきます。実は南部鉄器とIH調理器は相性がとても良い組み合わせなのですがあまり知られていないようです。そこでIH調理器の特徴を踏まえたうえで、南部鉄器を使うメリットや注意点をご紹介します。

南部鉄器はIHと相性抜群

南部鉄器は岩手県の代表的な伝統工芸品です。水沢南部鉄器の歴史は古く平安時代にまでさかのぼります。長い歴史と工芸品であるというイメージから、ガスなどの直火でなければ使えないと考えている方も多いようです。

しかし、実際にはIH調理器と鉄製の調理器具は非常に相性が良いものです。まずはIHの仕組みや特性を把握し、南部鉄器との相性の良さについて見ていきたいと思います。

IHは調理器具自体を発熱させる仕組み

IHが南部鉄器を発熱させる仕組み

IH調理器の最大の特徴は鍋や鉄瓶など調理器具そのものを発熱させるという点です。

IH調理器にスイッチをいれると内部のコイルから磁力線が発生します。調理器具を近づけると表面に渦(うず)電流がおき、調理器具が持つ電気抵抗によってジュール熱が生み出され、調理器具自体が発熱するのがIH(Induction Heating-誘導加熱)の仕組みです。

難しく聞こえますが、「金属に電気を流すと熱が発生すること」*1を利用した調理器具であるということです。

その他にも熱効率が良く*2、ガスコンロのように直接火を利用しないため、火災のリスクを抑えられることも特長です。

IHに対応する調理器具の条件

熱効率が良く火災の危険性も低いIHですが、すべての調理器具が使えるわけではありません。素材によっては発熱しないものがあります。具体的には土鍋、銅、アルミでできた調理器具です。

IH調理器に対応するには3つの条件が必要です。

  • 磁石がくっつく素材でできている
  • 底面の直径がIH調理器メーカーの指定する最小サイズ以上である
  • 底面がIH調理器と密着している

IHの仕組みで見てきたようにIHは磁力線を利用するため、アルミ、銅、土鍋など磁石がくっつかない素材*3では磁性による渦(うず)電流がうまく発生しません。

また、磁石がくっつく素材でであっても、底部のサイズが小さすぎるとセンサーが反応しない場合があります。

さらに底部のサイズが十分であっても、突起や凹みなどよりIH調理器と底部が密着しない場合は利用ができないことがあります。

IHで利用できない南部鉄器の底の形状

南部鉄器はIHで利用できる素材でできている

南部鉄器は鋳鉄という炭素とケイ素を含んだ「鉄」が主原料です。

鉄は磁石がくっつく素材で、ジュール熱を生み出す十分な電気抵抗を持つ金属です。IHの仕組みで見てきたようにこれらの特性は、IHで利用できる調理器具の条件を満たしていることをご理解いただけるかと思います。

残る注意点としては「底面のサイズ」と「底面の凹凸」の2点です。これはIH調理器ごとに仕様の違いがあります。製品名や型番などをもとにインターネットなどでサイズや凹凸の対応などの仕様をご確認ください。

底面の最小サイズ不足にはIHヒーティングプレートを利用

底面の直径サイズが合わずに加熱できない場合は「IHヒーティングプレート」を利用する方法があります。IHヒーティングプレートは、アルミなどの磁石にくっつかない素材でできた調理器具やマキネッタ(直火式エスプレッソメーカー)などの底面の小さな器具を間接的にIHで加熱するための金属製のアダプターです。トッププレートの汚れ防止用の「IHマット」ではありませんのでご注意ください。

南部鉄器をIH調理器で使うメリット

南部鉄器で白湯を沸かすと、まろやかな味わいになり、鉄分の補給に役立つといわれています。これは熱源にIHを使った場合も同じです。ここではIH調理器と南部鉄器の組み合わせだからこそのメリットを見てみたいと思います。

メリット1 持ち手が熱くなりにくい

全体が鉄でできている南部鉄器は、火にかけて使うと持ち手(ツル)が熱くなります。そのためお湯を注ぐときに素手で持つとやけどの恐れがあります。安全に使うには鍋つかみやキッチンミトンが必要です。

一方、IH調理器で加熱した場合、持ち手は直火のときほど熱くなりません。もちろん火傷をしないよう注意は必要ですが、ガスコンロでお湯を沸かしたときよりも取り扱いが容易です。

メリット2 底部の色が変化しにくい

近年ではヨーロッパを中心にカラフルな南部鉄瓶の人気が高まっています。IHのメリットの一つに肌(外表面)の色が変わりにくいことが挙げられます。ガスコンロで火にかけて使うと、底部から側面にかけて火に直接当たっている部分が炎によって徐々に変色していきます。色の変化を避けるためには、火力を調整し底面より火が大きくならないよう調整しなければいけません。

IH調理器であれば、火を使うことがありませんので、炎による変色を避けられます。南部鉄器は、使うほどに肌の表情が変化することも楽しみの一つですが、使い始めたときの色合いをできるだけ保持したい場合には、IH調理器を利用することをおすすめします。

茶こし付きで急須としても直火で鉄瓶としても使えるカラフルな 鉄瓶兼用急須 立目シリーズ。IHなら鉄瓶の底部が変色しにくいメリットがあります。

南部鉄器をIHで使う際の注意点

南部鉄器をIH調理器で使うことのメリットも多いのですが、注意点もいくつかあります。

変形の恐れがあるため火力は中火以下

200VのIH調理器の最大火力はとても強力です。短時間に底部だけに温度変化が生じるため、膨張率の違いから変形や破損の原因になります。消費者センターでも注意喚起*4がされているように、この変形や破損は南部鉄器に限らず、ステンレスなどの素材を含めたすべての調理器具で発生する可能性があるものです。そのため日頃から「中」以下の火力でのご利用をおすすめします。

内側がホーロー加工されているものは急須用

内側がつるつるとしたガラス質のホーロー加工されているタイプは、やかんとして利用できる「鉄瓶」ではなく、茶葉とお湯を一緒にいれてお茶を淹れるための「急須」としての製品です。これを湯沸かし用に使うとホーローのコーティングが剥がれてしまうことがあります。これはIHに限ったことではなく、ガスなど直火でも同じですが、IHは特に温度変化が大きいため注意が必要です。

IHから少し話が脱線しますが、この内部がホーロー加工されている急須タイプは表面がガラス質でコーティングされているため、錆びずに取り扱いが容易な反面、鉄分補給を期待することができません。

湯沸かしや鉄分補給を目的として南部鉄器をご希望されている場合は、購入時に内部のホーローコーティングの有無を確認しましょう。

ホーロー加工されている南部鉄器とホーロー加工されていない南部鉄器
塗装前の急須:左は内部がガラス質のホーロー加工。
右は内側も鉄そのもので小さい鉄瓶です。直火も鉄分の補給も可能

まとめ

南部鉄器は本来IH調理器との相性がよい製品です。これまで伝統工芸品のため「自宅のキッチンはIHだから使えない」と思っていた方にこそこれを機に使っていただければと思います。

IH調理器であれば、ガスコンロで加熱したときのように、持ち手が熱々で持てなくなることがありません。また、底の色の大きな変化も防ぎやすく、熱効率が良く、冷房ロス効果で節電にも役立ちます。

IH調理器でも使える南部鉄器を、あなたの暮らしに取り入れてみませんか?南部鉄器工房及富では以下のリンクからIH対応の南部鉄器をオンラインショップから購入いただけます。

*1 金属を含めた「導体」
*2 家庭の省エネ徹底ガイド春夏秋冬 経済産業省 資源エネルギー庁 2017年8月発行
*3 オールメタル対応IHではアルミや銅なども利用可能
*4 電磁調理器対応鍋を調べてみました 石川県消費生活支援センター

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