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南部鉄器でも人気の鉄玉で鉄分不足を解消した世界的な事例と効果

鉄分補給ができる南部鉄器の鉄玉アンモナイト

世界で多くの人が抱えている鉄不足問題。鉄不足が原因で起こる貧血は、けん怠感やめまい、うつ症状などさまざまな不調の要因になるといわれています。

カンボジアでは、かつて貧血が深刻な社会問題となっていました。その状況を改善に導いたのは、小さな鉄の塊、“鉄玉”だったのです。

世界的に有名な鉄玉(鉄インゴット)による鉄分欠乏症の改善事例となったカナダのゲルフ大学の博士論文より、実際の効果を確認し、同じ鉄インゴットである南部鉄器の鉄玉についてもご紹介します。

カンボジアで深刻だった鉄分不足

鉄、ビタミンA、ヨウ素の欠乏は“世界の三大微量栄養素欠乏”として知られています。その中でも最も欠乏人口が多いといわれているのが、鉄欠乏です。鉄分が不足すると、体内でヘモグロビンがうまくつくれなくなり、酸素を運搬する能力が低下してしまう病気「鉄欠乏性貧血症」を引き起こします。

貧血と呼ばれる症状がみられた場合、実に90%以上はこの鉄欠乏性貧血症が原因です。世界保健機関(WHO)は、鉄欠乏性貧血症の総数は20億人以上にも及ぶと推定しています。貧血になると、疲れやすい、食欲がない、気分が落ち込む…といったさまざまな症状が現れます。

鉄欠乏性貧血症をはじめとする栄養素欠乏は、発展途上国で特に深刻です。かつて、カンボジアでは人口の約半数が貧血に苦しんでいるといわれていました。しかし、こうしたカンボジア人の健康状態を救った、ある“魚”がいます。

鉄分不足を解消した救世主の“魚”

その魚の正体の名前はHappy Fish(一般にLucky Iron Fishと紹介されますが、論文タイトルは”Happy Fish”表記のためこちらを踏襲)。実際は魚でなく、魚の形をした鉄の塊です。大きさは7.5cm、こぶしの中におさまる程度の小さな鉄玉ですが、驚くべき鉄分補給の能力をもっていました。

カンボジアで310人を対象とした調査では、このHappy Fishを食材と一緒に沸騰した鍋に入れて10分程煮ることで、9ヶ月後、貯蔵鉄量をはかる血清フェリチン濃度検査で有意に改善が認められ、最終的に貧血の有症率が対象グループと比べて半減する結果となっていました。

Significant improvements in serum ferritin concentration were observed at 9 months (6.9 ng/mL) and endline (30.8 ng/mL) in women who used an iron fish regularly when compared to the control group. Overall, use of the iron fish led to a two-fold reduction in the prevalence of anemia.

HAPPY FISH: A NOVEL SUPPLEMENTATION TECHNIQUE TO PREVENT IRON DEFICIENCY ANEMIA IN WOMEN IN RURAL CAMBODIA, Christopher V. Charles, April, 2012 page3

酸性のものと併用することで通常1日に必要な鉄分の75%以上の鉄分の溶出を認めた

Iron leaching was observed in water and soup samples prepared with the iron fish when used concurrently with an acidifier. More than 75% of daily iron requirements can be met with regular use.

HAPPY FISH: A NOVEL SUPPLEMENTATION TECHNIQUE TO PREVENT IRON DEFICIENCY ANEMIA IN WOMEN IN RURAL CAMBODIA, Christopher V. Charles, April, 2012 page2

鉄玉を利用する際は、鉄玉単体ではなく果汁など酸性の食材と一緒に調理することで鉄分がより多く溶出されることが分かっており併用が推奨されています。

*こちらの研究は多くのメディアで取り上げられた世界的に有名なカンボジアでの研究結果となりますが、栄養や環境などの状況は日本とは異なる点があり、多くの博士論文の中の一つであることも考慮する必要があります。

その国ならではのデザインが人気のヒミツ

この取り組みは、博士論文の執筆者であるクリストファー・チャールズ氏が2008年にカンボジアへ訪問した際、貧血の社会的影響を目の当たりにしたことがきっかけとなりました。

鉄分を取り入れるためには鉄鍋を利用して調理するとが良いことは広く知られていますが、カンボジアなど発展途上国では鉄鍋は高価なため、アルミニウムを素材とした鍋が広く利用されています。そのため鉄鍋による鉄分の補給を普及させることは困難でした。

「鉄の塊を鍋に入れて調理することが鉄鍋と同様に効果的」ということに着目したチャールズ氏は当初、何の変哲もない“鉄の塊”そのものをカンボジア人に配布しました。しかし、この鉄の塊を鍋に入れることで鉄分不足を補える…と説明したところで、多くの人は使いたがらず、失敗に終わったといいます。

そこで鉄の塊のデザインを、カンボジアで“幸運のシンボル”として愛されている魚の形にし、Happy Fishとして再度作成したところ、多くの家庭で受け入れられることに成功しました。

「アマビエ」の鉄玉で疫病退散を祈願

鉄玉を使うことで貧血や鉄欠乏性貧血症が改善したという世界的な実例をご紹介しましたが、ただの鉄の塊としてではなく文化的に受け入れやすいストーリーとデザイン性が人気となった事例でした。

弊社、及富でも日本ならでのデザインである「アマビエ」の鉄玉をお取り扱いしています。

鉄分補給を目的とした南部鉄器の鉄玉アマビエ
鉄分補給を目的とした南部鉄器の鉄玉アマビエ

1846年に現在の熊本県にあたる「肥後国」の海上に出現したといわれている、疫病封じの妖怪「アマビエ」型の鉄玉です。

2019年に発生した新型コロナウィルスの早期収束を願って制作をしました。

縁起物としてそのまま飾るだけでもとても可愛いいのですが、Happy Fishと同じように鍋に入れて食材と煮たり、お湯を沸かす際にやかんの中に入れたり、ぬか床に入れたりと、鉄分補給のサポートにもお使いいただけます。以下からご購入いただけます。

南部鉄器を日常に取り入れて鉄分補給

「自分は貧血ではないから大丈夫!」と思っている方も多いかもしれません。しかし、貧血と診断されたことがない方でも、潜在性鉄欠乏症の可能性があることをご存知でしょうか。

潜在性鉄欠乏症は、“隠れ貧血”とも呼ばれており、体内にストックされている鉄分が不足している、貧血予備軍のような状態のことです。潜在性鉄欠乏症になっていると、けん怠感やうつ症状など、貧血のような症状を起こすことがあります。そのまま放置しておくと鉄欠乏性貧血症(貧血)に発展する可能性も考えられます。

南部鉄器の鉄玉だけでなく、鉄瓶(やかん)、鉄鍋を日常に取り入れることで、少しづつですが自然に鉄分補給ができるようになるでしょう。

実際に及富の8代目である菊地はテレビ朝日系列の「名医とつながる!たけしの家庭の医学」において、南部鉄器を普段から使うことにより自然に鉄分の摂取をしていることで心臓年齢が実年齢よりも26歳も若いということが放映されました。

ただし、南部鉄器を含めた鉄玉は、鉄サプリメントや医師から処方される鉄剤ではありません。貧血症の症状がある場合は、必ず医師に相談のうえその指示にしたがってください。

及富では、鉄玉の他にも鉄分補給に活用できる急須や鉄瓶などを多数取り揃えています。以下のリンク(オンラインショップ)から、ご覧いただけますので、是非この機会にご覧ください。

出典・参考
HAPPY FISH: A NOVEL SUPPLEMENTATION TECHNIQUE TO PREVENT IRON DEFICIENCY ANEMIA IN WOMEN IN RURAL CAMBODIA, Christopher V. Charles, April, 2012
Association between iron-deficiency anemia and depression: A web-based Japanese investigation Shinsuke Hidese MD, PhD,Kenji Saito MSc,Shinya Asano MSc,Hiroshi Kunugi MD, PhD
知っていますか?鉄分不足による貧血,日本臓器製薬
開発途上国における鉄欠乏性貧血症対策 相川律子,神馬征峰,JICA
潜在性鉄欠乏症とは 医療法人榎木内科・循環器科医院
カンボジアの人を貧血から守る鉄製の魚「Lucky Iron Fish」 WIRED JAPAN

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