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風鈴は南部鉄器がおすすめ!科学が解いた音色の秘密は【うなり】

南部鉄器の風鈴

毎年6月から8月までJR東北本線の水沢駅ホームでは数百個の南部風鈴が飾り付けられます。1962年から続くこの取り組みは、私たちが位置する岩手県奥州市の夏の風物詩となっており、数百個もの南部風鈴が一斉に奏でる涼し気な音色は乗降客に夏の訪れを告げています。

一口に風鈴といっても南部風鈴に代表される鉄製の風鈴もあれば、ガラスや陶で作られる風鈴もあります。また、海外のウインドチャイムのように複数の長さが異なる金属がぶら下がり複雑な和音を奏でるものも存在しています。

これらの風鈴と南部風鈴はどのような点が違うのでしょうか?その歴史や科学で解明された心地よい音色の秘密を解説したいと思います。

風鈴の歴史

風を受けて音を発する風鈴の起源はインドと中国の大きく2つの説があるようです。

一つはインドの仏教寺院で塔廟から魔除けとして吊り下げられた「風鐸(ふうたく)」が始まりとされるもの。2つめの説は中国で竹の枝に吊り下げてその音で吉凶を占らなった「占風鐸(せんぷうたく)」が始まりとされるものです。

いずれにせよ仏教の伝来と共に寺院に吊るされる魔除けの風鐸が日本に伝わりました。法隆寺の五重塔に吊るされている風鐸は日本最古の例とされています。

寺院につるされるような大きな風鐸が、いつ頃、どのような経緯で現在のように小型になったのかは分かっていませんが、浄土宗を開いた法然が「ふうれい」と呼び、現在の「ふうりん」へとその名が変化したとされています。

浮世絵には風鈴が多く描かれていることからも江戸時代には高貴な人々だけでなく魔除けとして一般化したようです。魔除けの目的から夏だけでなく1年を通して風鈴が吊るされることもありました。

しかし、江戸時代には「虫聞(むしきき)」という鈴虫の声を楽しむことが人気となり、この鈴虫の声と風鈴の音色が重なることから、秋になると風鈴が仕舞われ、夏の風物詩となっていったという説があります。

また、鉄製の風鈴が一般化した理由の一つに「風鈴そば売り」の流行があるとされています。風鈴そばとは担ぎ屋台の形態一つです。安いかけそばだけを売る「夜鷹蕎麦」より少しランクの高い具のある蕎麦を提供し、清潔で値段も少し高めだったとされます。

安い夜鷹蕎麦との差別化のために風鈴を屋台に吊るして蕎麦を売り歩いたことから風鈴そばと呼ばれ賑わいました。

上記、太田記念美術館の「江戸時代のお蕎麦屋さんをご紹介します」では浮世絵に書かれた風鈴そばが紹介されています。よく見ると屋台の軒先に釣鐘型の風鈴が描かれていいます。

音色が心地よく涼を呼ぶ風鈴の特徴

風鈴の音とその印象を評価した研究*1によると、風鈴の音の印象は「うなり」があり、減衰にかかる時間が長いと良い印象になることを明らかにしています。

「うなり」とは、周波数の近い異なる音が干渉しあう時に発生する事象です。それぞれの音を別に聞いても何も発生しませんが、同時に聞くと周期的に強くなったり弱くなったりを繰り返します。

難しい話は置いておいて、分かりやすいサンプルを聞いてみてください。ピー(438Hz)ピー(442Hz)と短い音が2回聞こえます。その後にこの2つを同時に発生させています。お寺の梵鐘を鳴らした後に残る余韻のようです。まさにこれが「うなり」です。

MBAM, CC0, via Wikimedia Commons

また、別の風鈴の音印象に関する研究*2によると「涼しい」という印象の評価は、ウインドチャイムのような複数の音がなるものより単音の風鈴のほうがより涼しいと感じると評価されています。また、ガラスや鉄の素材の風鈴が「涼しい」と感じる評価が多くされています。

これは素材のイメージと関連しており、氷がガラスや陶磁器などの器に当たってカランと鳴るような高く乾いた音を涼しいと感じている可能性を研究では示しています。

つまり、音色が心地よく、涼しく感じる風鈴とは、①「うなり」があり、②長く音が続き、③単音で、④高く乾いた音がなる素材でできた風鈴が好ましいと考えられます。

南部風鈴の大きさと音色の関係

風鈴の大きさでその音色はどのように変化するのでしょうか?大中小の3つの南部風鈴を用いて「音の高さ」「余韻の長さ」「うなり」の違いを実験*3しています。

その結果、大きい南部風鈴は、低音域で多くの周波数の音が発生しており、振動エネルギーが大きいためにより余韻の長い音が発生していました。

また「うなり」に関しては2つの音の周波数が近いほどその周期が長くなりますが、大きい南部風鈴のほうが2つの周波数が近いことが確認されており、ゆったりとした「うなり」となっています。

反対に小さい南部風鈴では高音域(高く乾いた音)が発生し、周波数の数は少なく、余韻は短め、「うなり」の周期も短くなっています。

この結果から①ゆったりとした風雅な音を楽しみたい場合は、大きめの風鈴。②そよ風のような涼し気な音を楽しみたい場合は、小さい風鈴を選ぶと良いということが示唆されています。

南部風鈴の素材は鍋や鉄瓶とは違う鉄

南部風鈴に使われる鉄は南部鉄器の鍋や鉄瓶などに使われる鉄とは少し異なることをご存知でしょうか?炭素を含む鋳鉄であることは同じですが、鋳造後に急冷することで白鋳鉄というより硬い組織を持った鉄になります。

涼しく感じる風鈴の要素として④高く乾いた音がなる素材が挙げられていましたが、南部風鈴ではより硬い白鋳鉄という素材を使うことで鋳鉄よりもより高く乾いた音、つまり、より涼しく感じることができる音を奏でることができるのです。

まとめ

科学的な風鈴の研究はまだ多くはありませんが、昔の職人たちの優れた感覚や技術が分析により裏付けられた形となったことは驚くばかりです。残念ながら実験で使われた南部風鈴は及富製ではありませんでしたが、①「うなり」がある、②長く音が続く、③単音、④高く乾いた音がなる素材と同じ条件を満たしている多くの南部鉄器の風鈴を提供しています。

魔除け・厄除けとして広まった風鈴ですが、及富では数年前より新型コロナの収束を願いアマビエ風鈴を販売しています。アマビエ風鈴以外にも昔ながらのスイカや金魚の風鈴もございますのでこの機会に是非以下のリンク(オンラインショップ)よりご購入ください。

*及富の南部風鈴は夏季のみ発売しており、生産数に限りがありますのでお早めにお求めください。

出典・参考
*1 風鈴の音響解析および音印象評価に関する研究 塩川博義 日本サウンドスケープ協会2021年度春季研究発表会, 2021年06月, 日本サウンドスケープ協会 https://researchmap.jp/read0028379/presentations/33009664
*2 現代における風鈴の音印象に関する研究 高尾美穂、塩川博義 日本大学生産工学部第55回学術講演会講演概要, 2022年12 https://www.cit.nihon-u.ac.jp/laboratorydata/kenkyu/kouennkai/reference/No.55/pdf/3-18.pdf
*3 音の秘密 風鈴の大きさと音色 シリーズ●身近な金属のミクロ組織を読む 住友金属工業(株)社友 工学博士 大谷 泰夫
https://www.nstec.nipponsteel.com/tsushin/magazine/53_2.pdf
南部風鈴の振動解析に関する検討 森田一真,藤岡豊太,永田仁史,安倍正人 H25年度 計測自動制御学会 東北支部 第280回研究集会 (岩手大学) 2013年05月 https://www.topic.ad.jp/sice/htdocs/papers/280/280-5.pdf
梵鐘におけるうなりの発生性状に関する研究 ―真栄寺の梵鐘を例にしてー 塩川博義 サウンドスケープ 19 73-75 2019年7月
http://home.h03.itscom.net/shio_lab/Temple_Bell.pdf
NHK 美の壺 風鈴 NHK出版 (2007/6/22)

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